「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を読んだのでハイスクールでの教え方を聞きました

今日は、「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を読んで(もちろん日本語で村上春樹訳で)、
ミュージカル「ウィキッド」を観ました。

キャッチャー・イン・ザ・ライ」は、読み終わってから、
ニューヨークのハイスクールに通っている女の子に、「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の解説をしてもらいました。
彼女はこの小説を 学校の授業で 先生と一緒に読んだので、アメリカの学校でどんなふうに教えているかを
知っているのです。
そのなかでいくつかあげると、

@ 主人公のホールデンは 妹のフィービーと話していた時、
   自分がなりたいのは、「キャッチャー・イン・ザ・ライ」だというくだり。
   この部分がタイトルになっている。
   (村上春樹訳:p.292-p.293  「だだっぴろいライ麦畑みたいなところで、小さな子どもたちがいっぱい集まって
何かのゲームをしている・・・・ちゃんとした大人みたいなのは一人もいないんだよ。僕のほかにはね。・・・・・
僕がそこで何をするかっていうとさ、誰かその崖から落ちそうになる子どもがいると、かたっぱしからつかまえるんだよ。・・・
ライ麦畑のキャッチャー、僕はただそういうものになりたいんだ」)

<解説>ハイスクールの解説はもっと詳しいけれど、かいつまんで言うと;
子どもはイノセントの象徴。イノセントな子どもたちが、崖から落ちるというのは、イノセントではなくなってしまうこと。
主人公のホールデンは 子どもがイノセントでなくなるのを 防ぎたい。だから、ライ麦畑のキャッチャー になりたい。
そして、じつはホールデン自身が、イノセントであり続けたい存在である。でも、人は生き続けるとイノセントではいることが出来ない。
ホールデンは move on しないでいたいし、出来ないでいる。

@妹フィービーとの ラストシーン。フィービーが回転木馬に乗るくだり。
  (村上春樹訳:p.355-p.360  回転木馬が大好きなフィービーは、回転木馬に乗ることにする。一緒に乗ろうとホールデンを誘う
が、ホールデンは 自分は乗らずに、近くのベンチでフィービーが乗っているのを見ることにする。「やがて木馬が回転を始め、
僕は彼女がぐるぐると回っていくのを眺めていた。・・・子どもたちはみんな金色の輪っかをつかもうとしていた。
・・・それで彼女が・・馬から落ちちゃうんじゃないかと、見ていてちょっとはらはらした。・・・もし子どもたちが金色の輪っかを
つかみたいと思うのなら、好きにさせておかなくちゃいけないんだ。・・・落ちたら落ちたときのことじゃないか。あれこれそばから口を出しちゃいけない」)

<解説>「回転木馬」は、「ライフ」人生の象徴。「子どものための乗り物で同じところをぐるぐる」回っている。
ホールデンは、今回、回転木馬に乗らずに、乗っている子供のフィービーを そばのベンチで見守っていることにした。
つまりホールデンは、「同じところをぐるぐる回っている」ことを止めることにした。
前は、イノセントな子どもたちが崖から落ちるのを防ぐ「ライ麦畑のキャッチャー」になりたいと言っていたが、
今回は、子供が欲しいものを取りたいために 馬から落ちても それはそれで好きにさせておかないといけない、
と考えるようになっている。
move on したくなかったホールデンが、move on を受け入れたといえる大切なシーン。

と、このような具合に、アメリカの中学高校生は、アメリカ文学を深読みするという
国語の授業を受けているらしいです。

あと、ひとつ可愛らしい場面、その高校生が言ってたので短いのをひとつ、
高校生「ホールデンがフィービーの好きな音楽のレコードを買ったでしょ。
そのレコードをフィービーにあげる前に 割ってしまったんだけど、
そのことをホールデンがフィービーに言うと、フィービーが、その割れたレコードを頂戴って言うでしょ。
そのとき、日本語の翻訳ではなんて書いているか知らないけど、フィービーは、
「save」って言う言葉を使うのね。つまり、”ばらばらに砕けたレコード”が”ぼろぼろになっているホールデン”のことで、
フィービーはそれを、「saveするから」って、ホールデンに言うの。ホールデンはフィービーに救われるの」
(村上春樹訳: p.276 それから僕はレコードの話をした。「あのさ、君のためにレコードを1枚買って来たんだ。
でも途中で落っことして粉々になっちまった」。・・・・「そのかけらをちょうだい」とフィービーは言った。
「しまっておくから(save)」・・・)

ところで、こ「キャッチャー・イン・ザ・ライ」のどこかに、主人公のホールデン
グレート・ギャツビー」すばらしい作品だと認めているようなことを言っているくだりがありました。

それと、アメリカ文学では、グリーン・緑は 「イノセント」を表すのだそう。
「グレートギャツビー」のリリー先生も、グリーンはフレッシュネス を表すと言ってました。
ウィキッド」や「オズの魔法使いの」緑や、エメラルド・グリーンもそう意味もあるのでしょうか。